遠回りして気付いた想い
こんな時間に来客?

オレは、不思議に思いながら、順一を見る。

順一も首に横に振ってることから、そんな話は聞いてないみたいだ。

じゃあ、一体誰が?

オレが、そんな事を考えている間に順一が応対する。

『高橋だが、亜耶を迎えに来た』

インターフォンを通して、あの人の声がここまで聞こえてきた。

何で、あの人が亜耶を迎えに来るんだ?

帰りは、オレが送って行くつもりでいたのに?

順一も、まさかあの人が来るなんて思いもしなかっただろう、驚いた顔をしている。

そして、そのまま玄関に向かう順一。

「どうぞ」

順一が、招き入れて、ドカドカと足音をさせて、リビングに現れる。

そのまま、亜耶の側まで来ると。

「亜耶。帰るよ」

優しい声で亜耶に語りかけている。

亜耶を見れば、半分目を閉じており、なんだか頼りない顔をしてる。

「遥…さん?なんで…居る…の?」

亜耶が、顔をあげてあの人を見上げればそう声を出していた。

甘えた声で、あの人の名を呼ぶ亜耶。

まだ付き合ってっも居ないのに、嫉妬しそうだ。

「うん…。帰る。遥さん、ありがとう」

って、亜耶が亜耶じゃない。

こんな姿、誰にも見せた事無いんじゃないか?

だって、他の四人も固まってる。

「亜耶?荷物って、これだけか?」

あの人の言葉に。

「うん…」

素直に頷く亜耶。

そのやり取りが、恋人どうしに見えて、オレの胸に重くのし掛かってくる。

「じゃあ、帰るぞ。皆に挨拶して」

「ごめんね。先に帰るね。おやすみ」

あの人に言われた通りに挨拶する亜耶。

あいつに支えながら歩く姿に、胸が痛くなる。

「邪魔して、悪かったな」

大人の対応で、亜耶を支えて出ていく。

玄関の戸が"バタン"と閉まったのを期に、各々が動き出した。

「頑張れ、悠磨」

二人が、哀れみの笑顔を浮かべて、オレの肩をポンと叩いた。
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