恋の始まりは偽装結婚
「……わかった。その新郎役をやろう」


 私の必死さをわかってくれたのか、ほんの少し同情の瞳を見せて、彼は深いため息をついた。

 その言葉を聞いて、肩の力が抜けていく。

 よかった……これでおばあちゃんに安心してもらえる。

 私は安堵感からさっきまでこわばっていた顔が緩み、微笑む。


「ありがとうございます」


 お辞儀をしてから顔を上げる。


「ただし、一つ条件がある」

「じょ、条件ですか……? 何でも言ってください。できる限りのことはしますから」

「この茶番劇の理由だ。それを教えてくれたら協力する」


 そこへ牧師さまが再びやってきた。男性と一緒にいるのを見て、出てきてくれたのだろう。


「ミズ・ユア、レモネードがぬるくなってしまいますよ」

「牧師さま、彼が手伝ってくれます」


 唐突だけど、嬉しくてにっこり笑って言っていた。

 牧師さまは黒いTシャツにビンテージのジーンズ姿の背の高い彼から、後ろに停まっているおんぼろ車に視線を動かしたけれど、すぐに私の顔を見て微笑んだ。


「それはよかったです。神はあなたを見捨てなかったのですよ」

「はい」


 この出会いは神さまのおかげだと思っている。

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