恋の始まりは偽装結婚
「ミスター?」

「タクマ(拓真)・サエキ(佐伯)です」


 彼は名前を尋ねる牧師さまと握手をしている。

 何歳くらいなんだろう……。英語が堪能だからこちらに住んでいる人なのかもしれない。


「ミスター・サエキ、どうぞレモネードで喉を潤してください。話は中で」


 牧師さまに促されて、彼はチャペル横の建物にゆったりとした足取りで向かう。

 私はベンチに置きっぱなしだったタキシードの箱を抱えると、この幸運に笑みを浮かべながら彼らの後を追った。



 建物の中へ入ると、イスに座るよう私たちに牧師さまは勧め、テーブルの上に用意してあったレモネードが入ったピッチャーからグラスにたっぷり注ぐ。レモネードと一緒に注がれる氷がグラスに当たり、カランと涼しげな音をたてる。

 佐伯さんは牧師さまの前でも堂々としており、気軽に話をしている。

 おんぼろ車に乗っていても彼は清潔感があり、ビンテージ物のジーンズはかなり高そうだと見て取る。

 ジーンズ好きのマジシャンをひとり知っており、彼の付き添いでビンテージものしか置いていない店へ案内したことがあった。

 彼が気に入ったジーンズを探す間、私は店主に色々とレクチャーされ、少しはわかるようになったのだ。


 佐伯さんはジーンズにお金をかける人なのかも……。

 勝手に彼の経済状態を考えている自分がおかしくなる。

 クスッと笑ってしまうと、会話をしていたふたりが私を見る。




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