恋の始まりは偽装結婚
「またさっきの奴らが来るぞ」

「さっきの奴ら……どうして知っているんですか?」


 なぜ知っているのだろうと、首を傾げて見つめてしまう。


「少し前に通ったときに、ウエディングドレスを着た女とガキが四人いるのを見かけたからだ」


 彼は憂鬱そうに顔を顰める。


「気になって戻ってきてくれたんですか?」


 彼はそれを素直に認めたくないのか、肩をすくめてから小さく頷く。


「ありがとうございます。もう帰りますから大丈夫です」


 頭を下げたところで、ふとこの人に代役をお願いしてしまおうかと思ってしまった。

 カッコいいけれど、車は酷いのに乗っている。お金を払えば引き受けてくれるのではないか。


「わかった」


 彼は帰ろうとして、車のドアに手をかけた。


「あ、あのっ!」


 とっさに私は大きな声で呼び止めた。

 ドアを開けようとする手が止まり、彼は顔だけ私の方へ向けた。


「一時間ほどお時間ありませんか? お願いしたいことがあって。簡単なアルバイトと思ってくださってけっこうなのですが」


 この男性が声をかけてきてくれたのは、神さまの思し召しなのかもしれない。

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