未来の君のために、この恋に終止符を。
たとえ一瞬でも晴樹と重なって見えてしまった。
それが原因で、1歩ずつ、そっと距離をつめてきた彼を受け入れられないのに、戸惑ったまま逃げることもできない。
その場で固まった私の姿を瞳に映して、彼はひとつひとつ許しを請うようにゆっくりとした動きで私に手を伸ばす。
両頬のそばにある手が、私がいやがらないと確認してから、それでも躊躇いながらかすかに触れた。
「っ、」
確かに触れた、はずなのに。
空気の抵抗を感じる程度で、ぬくもりも肉体も血の巡りもない。
人としての存在を確信できない。
あなたは……なに?
あまりにも不可思議なことで、私の理解が追いつかない。
浅い呼吸を繰り返し、喉の奥までひゅうと空気が流れこむ。
まばたきをひとつ。
震えるまつげを押し上げて、目を開いても頬の感覚は変わらない。
「同じ時に、同じ存在は、いることができない。
15歳の俺がこの瞬間には正しいものだから、22歳の俺に体はないみたいなんだ」
それはまるで、自分で自分を異質だと、不必要だと言っているよう。
信じられるはずはないけど、仮に彼の言葉を受け入れたなら。
失われた彼の存在を確定づけるものに、未練がないなんてこと、ありえない。
彼自身にとっても、私にとっても。
体がないということだけでも十分衝撃的だったというのに、そのうえ意識していてもなにかに触れることさえ不可能だとまで告げられてしまう。