未来の君のために、この恋に終止符を。




「別に悪くはない。
でも、花沢はいつも逃げてるけど、それでなんかいい方向に変わったことってあるわけ?」

「っ……」

「なかっただろ」



断定されてしまい、私は安藤くんに返す言葉を失った。

建前やずるい感情、すべてを奪われた状況下において、心はとても無防備だ。

彼の言葉は真実だから、なにも言うことができない。



瞳をくもらせた私の元に、晴樹が少しずつ距離をつめる。

私の顔をのぞきこんで、昔だったら頬が掌で包まれていたであろう距離で、周りに意識が向かないようにしてくれる。

そうして私を甘やかす声を出した。



「実莉がなにを言っても、片岡だったら大丈夫。
なんだって喜んでくれる」

「うん……」

「もし違っても、実莉のそばには俺がいる。
だから、片岡がいなくても、実莉がひとりになることはないよ」



どこまでも私のことばかり考えている晴樹の様子に少し泣きそうになった。



優しい彼に私は小さく頷く。

ふわりと頭に乗せられた手が、するりと髪を撫でるようにすいた。



「だから、あとは、実莉がどう思われたいか。
どうしたいか。それだけだよ」

「……うん」



私は、自分の内面に近くなるようなことは、なにひとつ知られたくなかった。

それによって影響を与えることや、少しでも感情が揺れることが、私はとてもこわかった。



だけど、関係を歪めてしまったけど、それでも変わらずそばにいてくれる晴樹がいるから。

私は恵まれているから。



「私、片岡さんのところに行って来る」



少しだけ、勇気を出そう。

片岡さんと、大切な話をしよう。





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