未来の君のために、この恋に終止符を。




夏期講習の最終日に笑った時にも似たようなやり取りはあったけど、あれは安藤くんが口にしていたこと。

晴樹本人の言葉じゃなかったから、驚き、恥ずかしく思いつつもなんだかんだで気にせずいられた。



だけど今回は違う。

はっきりと、本人から言われてしまった。



「実莉が気づいてないだけで、俺は割と嫉妬深いんだよ」



むっとした顔のまま、とろとろと形を崩すように頬杖がずれていく。

私を見つめながらも、伏せているのに近い体勢になった。



「……うそ」

「うそじゃないよ」



本当のこと、と言われてしまい、動揺を隠すことができない。



「……でも、いいよ。
実莉が笑ってくれる方が嬉しい」



そう言って、晴樹は頬を桃色に染めて、とびきり幸せそうに笑ってみせた。



まるで傷を負う前みたい……ううん、それよりずっと楽しくて幸せな時間だ。

だからもう、1度素を晒してしまってから、だめだ。

感情を誤魔化すことが下手になってしまい、私はいつでも晴樹が好きだということがだだ漏れだと思う。



今も、晴樹のその表情にどきどきしている。



……ずっと、そうかもしれないと思っていた。

あの日、映画を観に行った日、私を迎えに来てくれた時から、未来の晴樹は他にはない特別な存在だったから。



私に意地悪をしていた過去の晴樹。

優しいばかりの現在の晴樹。

素直に気持ちを伝えてくれる未来の晴樹。

私は、どんな晴樹も好き。



だから目の前にいる、晴樹のことも、────好きなんだ。






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