スノウ・ファントム


(助けてあげられればいいけど、私のクラスでの立ち位置考えたら、無理だし……)


言いわけがましくそんなことを思う自分が、ずるくて卑怯でキライ。

葉村くんだって、見て見ぬふりをする私やクラスのみんなのこと、きっと大嫌いだ。


「……仕方ないんじゃない? キナコだけじゃなくてみんな、いじめの標的が自分になると思ったら、身動きなんかとれないよ」


音もなく傍らに現れて、勝手に隣を歩く他校の男の子が言った。

彼の名前は、ルカ。苗字は知らない。

そしてなぜか、私のことをキナコと呼ぶ。


「ルカ……また、勝手に心の声を聴いたの?」


じろりと見上げた先で、ばつが悪そうに苦笑するルカ。


「……ゴメン。聴きたくなくても、勝手に聴こえてくるんだ」


ルカはそう言うと、私の頭の上に大きな手を置いた。

そうされると、落ち込んでいた気持ちが少しだけ軽くなる。


ルカ――彼は、他人の心の中を読むことができる、不思議な男の子だ。

彼が突然に私の前に現れたのは、ちょうど三日前。

この街に初雪の降った、暗い夕暮れのことだった。


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