素敵な夜はあなたと・・・

 仕事を終えて急いで帰宅すると茜は既に自室で電話を掛けている様子だ。最近は友達の家の車で送って貰うからと優也の迎えを断っていた。茜の友達は多分あの男なのだろうと優也は分かっていた。

 しかし、美佐との関係が知られた以上、茜の交友関係に口を挟めなくなった優也はただひたすら耐えているしかなかった。

 そんな日々が続くと流石に優也の神経もかなり限界に達していた。



「出かけてきます」


 茜が夕方からどこかへ出かけようと玄関へと行く。一言優也に声をかけたもののそれは同居人として当然のマナーという程度のものだ。


「どこへ行くんだ? もう夕食の時間だぞ。」

「要らないわ。友達と食事に出るから。じゃ、行ってきます。」

「茜!」


 茜は優也に呼ばれても外出するのに必要な事はすべて伝えたからと、振り返ることはしなかった。

 マンションのエントランスを出て行くとそこには既に斎藤の車が待っていた。


「ごめんね、待たせた?」

「いいや。大丈夫。この前に美味しい店を見つけたんだ。だから、茜に食べさせたくてさ。」

「ありがとう! 斎藤君って優しいんだね。」


 かなり嬉しそうに微笑む斎藤と一緒に車に乗り込んでしまった茜。後を追いかけながらも二人の仲睦まじい様子を見ては優也は拳を握り締めて部屋へと戻って行った。

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