クールなCEOと社内政略結婚!?
 私たちの様子に、他のお客さんたちの注目が集まる。

「ちょっと、ふたりとも――」

「とにかくだ。食事は終わっただろう。コイツは連れて帰る」

「えっ?」

 今後は私の腕が掴まれてぐっと引き上げられた。無理矢理立たされ、よろけた私をいつかのように逞しい孝文の体が支えた。

「待って私、今から俊介を空港に――」

「子供じゃないんだ。ほうっておけ」

 そのまま引きずられるようにして、出口に向かう。振り返って俊介の顔を見ると、今までみたことのないような表情で、孝文と私を見ていた。気になって足を止めようとしたけれど、それに気がついた孝文がより強く私の手を引き、しっかりと手を握りしめた。

「ちょっと、挨拶くらいさせてよ」

 次はいつ会えるかわからない。それに私の誕生日を祝ってくれていたのに、これではあんまりだ。

「必要ないだろう。話は食事中で充分だったはずだ」

 彼の足は止まることなく、むしろスピードアップしている。なんとかならないかと、悪あがきをしてみる。

「あ、支払い……」

「俺が済ませた」

 なんだ、この抜かりのなさは。すでに目の前が出口だ。私はこれ以上抵抗しても無駄だと悟り、孝文に手を引かれるまま歩いた。
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