クールなCEOと社内政略結婚!?
 店を出るとすぐ目の前の駐車場に停めてあった車に乗せられた。

 助手席に座ると、すぐに車は走りだす。

 いきなり現れて、友達との食事を邪魔された私は文句のひとつも言ってやりたいと思っていた。

 けれどここでギャーギャー騒ぐよりも、黙っていた方が怒りが伝わるような気がした。今までとは違う。私は本当に怒っているのだ。

 孝文の方を一切見ないで、窓の外を流れる並木道を眺めていた。週末の今日、小雨が降りしきるなか、色とりどりの傘の花があちこちで見られる。

 しかしこの車――孝文はイタリアあたりのド派手な外車を運転してそうなイメージだったのに、乗せられた車は国産車だった。それでも私でも知っている最高級クラスの車だ。値段を聞くのが恐ろしい。

 けれど、車よりももっと意外だったのが、孝文の運転がすごく丁寧だということ。もっと荒い運転しそうなイメージだったのに、乗り心地が良くて驚いた。

 外を眺めながらそんなことを考えていると、荒れていた気持ちが落ち着いてきた。もともとあまり怒りの感情が長続きしないタイプという自覚はある。

 とはいえ、今更口を開くのもなんだかなぁと思い、だまったまま目的地に到着するのを待った。
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