クールなCEOと社内政略結婚!?
「あら、やだ私ったら、興奮しちゃって。あのケーキとってちょうだい」

「はい」

 どこから現れたのか、スーツ姿の男性がお母様に小さなホールケーキを差し出した。

「彼は私の秘書。別に変な人じゃないわ」

 今まで、気配を完全に消していたのにただの秘書のはずがない。

「おい、おふくろ、それっ!」

 それまで眉間に皺をよせてたまま黙っていた孝文が急に声を上げた。

「なによ、あなたも気が利くわね。私が来るってわかってて、ケーキを用意してるなんて……あら、やだ」

 お母様は、ケーキに乗っていたクッキーのプレートを見て声を上げた。

「孝文ったら、ハッピーバースデーなんてっ! 私の誕生日は三ヶ月も前なのに」

 いやねぇ。なんて言いながら、秘書が切り分けたケーキをひとくち食べ「あら、美味しい」と呟いた。

……ハッピーバースデー? それってもしかして。

 孝文の方を見ると、眉間の皺が驚くほど深くなっていた。私の視線を感じた瞬間、バツが悪そうに私から目を逸らしため息を漏らした。

「なんで来るかどうかわからないおふくろのために、ケーキなんて準備するんだよ」

 じゃあ、やっぱりこのケーキは孝文が私のために用意してくれたものなんだ。私の誕生日なんて知らないと思ってたのに。

 本当にそれだけのことなのに、嬉しくなって頬が緩む。

 私、自分で思っているよりも、彼に大切にされているのかもしれない。
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