クールなCEOと社内政略結婚!?
「くそっ!」

 ポケットに手を突っ込んだまま、いらだった様子で部屋の真ん中にあるソファにドサッと音をたてて座った。

「突っ立ってないで、こっちきて座れば?」

 扉が開かない以上、朝までここで過ごすしかないのだ。私はソファに向かい、少し距離をあけて隣に座った。

「飲むか?」

 目の前のテーブルには、シャンパンクーラーの中でボトルが冷やされていた。

「うん」

 飲めば気まずさも多少薄らぐかもしれないと、淡い期待をした。

 自宅ではふたりで生活しているけれど、寝室は別だし朝しか顔を合わせないこともザラだった。こんなふうに二人っきりで夜を過ごすことは、あの嵐の別荘の日以来だ。

 なんとなく、あの日のことを思い出して、トクトクと胸が甘い鼓動を刻んだ。

 これは、まずい。

 私は、頭を軽く振って思い出したあの日の状況を掻き消し、目の前で優雅にシャンパンをサーブする、孝文の姿に目をやった。

 目の前に置かれた、シャンパングラスでは、小さな気泡がシュワシュワと音を立てている。
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