クールなCEOと社内政略結婚!?
 茫然としていると、扉の向うから声が聞こえた。

「孝文、あさ美さん、気に入ってくれたかしら?」

「気にいるわけないだろ、ここを開けろよっ!」

「あら、ロマンチックに仕上げたつもりなんだけど、もっと色っぽいほうがお好み?」

 ダメだ、そもそも争点がずれている。かくなるうえは……。

「あの、お母様。私、お手洗いに行きたくて。ここ開けてもらえませんか?」

「あら、大変ね。でもその部屋には、バスルームも化粧室もあるから安心して」

 いい案だと思ったけど、相手は一枚上手だった。

「何のつもりだよ、いったい」

「何をそんなにカリカリしてるの? ふたりが忙しいって言うから、ふたりっきりになれる時間をわざわざ作ってあげたのに」

 もしかして、さっきの食事中の話をしているのだろうか。あんなの言い訳に決まってるのに。

 孝文が大きなため息をついた。

「わざわざそんなことしなくたって、やることやってりゃいつかできる。いいからさっさと鍵を開けろ」

 やることやってりゃ出来るよ。やってればね。

 この状況を打開する手立てが思い浮ばず、思わず自虐的なツッコミを入れてしまう。

「そんなに恥ずかしがらなくていいのよ。お母さんからのプレゼントだと思って、ね? じゃあ私はそろそろお暇します。素敵な夜を」

「おい、いいかげんにしろっ!」

「お母様っ!?」

 私たちは必死に声をかけたけれど、扉の向うから返事はなかった。
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