クールなCEOと社内政略結婚!?
 何か聞かれるかもしれない。そう思ったけれど、彼は一瞬不思議そうな顔をした後、理由が思い当たったようで、そのまま何も言わずに、写真の続きを見始めた。

 母が亡くなってそうとうの時間が経っている。けれどあまり楽しい話ではない。だから彼のこんな気遣いが嬉しく感じた。

 いつもの彼なら、人の気持ちなんてまったく考えそうにないのに。

「しかし、これも、これも……ほとんどアイツと写ってるな」

 社長がアイツと言って写真を指さしているのは、俊介のことだ。

「私、あまり友達がいなかったからね。俊介とは高校までずっと一緒だったから……なぜか今も身近にいるけど。まぁ腐れ縁ってやつですよ」

「ふーん」

 もっとなにか反応があるかと思ったのに、軽くスルーされて肩透かしされた。

 一通り写真を見終わった社長が、最初の方のページを開いてスマホを取り出した。

「どうかしましたか?」

「いやこの写真、記念に撮っておこうと思って」

 彼のスマホのカメラの先にある写真を見て、慌ててアルバムを奪い取る。

「変態っ!」

 その写真は小さな私がおむつ姿ででプールに入っているものだ。

「自分の妻のセミヌードの写真持っていて何が悪い」

「妻って……こんな小さい頃の写真。変態って言われてもしかたないですよ」

「いい弱みだと思ったんだけどな」

「ひどいっ! 姑息ですっ」

「賢いと言ってくれ。使える手段は何でもつかう主義だ。覚えておくといい」

 悪びれもせずにそういう社長に、呆れながらアルバムをチェストに戻そうと立ち上がると、ぐいっと手を引かれて体が傾いた。
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