クールなCEOと社内政略結婚!?
 そこで私はやっと気づいた。からかわれていたことに。

 パッと目を開くと、スマホの画面を見てニヤリと笑う社長。次にその画面を私に見せてきた。

「これ、いい写真が撮れた」

 見せられた画面には、顔を赤くして唇を噛み、目をつむっている、残念な顔の自分が写っていた。

「いや、ここまで良い反応するとは思ってなかったんだけど、ぷっ」

 最後には噴き出した。失礼すぎる。

「ちょっと、その写真消してください」

 慌ててとびかかり、彼の手の中のスマホを奪おうとする。

「おっと、これは今後の取引材料として大切にさせてもらう」

「ひどい……あんなからかいかたするなんてっ!」

 すでにベッドから下りていた社長に、枕を投げた。しかし、それを華麗によけると、部屋を出たところで振り返った。

「悪いなお前の期待に添えなくて。さっさと残りの片付けもすませろよ」

 そう言って部屋の扉をバタンと閉めた。なんて男だ。社長の言い方だと、私がまるで期待していたみたいじゃないか。

 悔しくて、ベッドにうつ伏せになり、ドンドンと拳を打ち付けた。スプリングが弾み体に響く。

 悔しい。アルバムを見て過去を少し共有したからって、気を許してしまったのかもしれない。ちょっと、気遣いができるなんて思ったのがそもそもの間違いだ。

 私は自分の浅はかさを反省し、イライラが治まるまでベッドでじっとしていることにした。

 しかし、朝から突然の引っ越しでバタバタしていた私は、そのままウトウトしてしまい、結局朝まで眠ってしまったのだった。
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