クールなCEOと社内政略結婚!?
 翌日――。生憎の空模様の中、私は俊介と待ち合わせしているレストランへ向かう。家を出るとき、孝文はすでに外出していた。土曜も日曜も仕事だの、接待だのでほとんど家にいないので特に気にしなかった。

 お気に入りの傘をさして駅前のデパートの裏にある、一軒のベトナム料理を扱うレストランに到着した。入口に入り、俊介の名前を告げるとすぐに席に案内された。すでに俊介は到着しているようだった。

 私の顔が見えると、軽く手を挙げて合図してくれた。私もそれに応えるように手を挙げてテーブルに向かい席に着いた。

「ごめんね。待った?」

「いや。そうでもない」

 ここ最近父と一緒にいる俊介を見ることが多かったせいか、ブルーのストライプのシャツにコットンのハーフパンツというラフな私服姿がなんだか新鮮に感じた。

「飲むだろ?」

「うん」

 普段は昼間からお酒は飲まないのだけど、久しぶりの俊介の誘いだ、断る理由なんてない。

 ベトナム産のビールを注文して、その間にメニューを覗き込む。

「フォーは絶対食べたいし、生春巻きも外せない。んーあ、見てこれ。パクチー追加できるって。デザートはチェーにする。これは決定ね」

「わかったから、フォーでもチェーでも好きなもの頼めよ。俺のおごりだ」

「いいの? いっつも支払はジャンケンで決めるに、太っ腹じゃん」

 からかう私に、俊介は呆れた顔を見せた。
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