クールなCEOと社内政略結婚!?
「あぁ、そのことね」

 まぁ、心配されても仕方がない。たしかに〝あんな〟形の結婚だ。きっと孝文は今日が私の誕生日だなんて知らないはずだ。そんな希薄なふたりがした、紙きれ一枚の重みしかない結婚。

「正直、よかったかどうかまだわからない。でもね、それしか選択肢がなかったんだよ。アナスタシアでデザインを続けていくには」

 最終的に私が結婚をするに至った経緯を、俊介に話して聞かせた。その間、どんどん彼の顔が曇っていく。

「やだ、そんな顔しないでよ」

 明るく話しをしたつもりだったのに、私の努力は無駄だったみたいだ。

「お前の親父さん――社長にはいつも驚かされるけど、今回のことだけは納得できない」

「俊介が納得できなくても、もう結婚しちゃたしね」

「そんな、笑って話をするようなことじゃないだろう? 大丈夫なのか? アイツとの結婚生活」

 俊介が心配を顔に浮かべて聞いてきた。付き合いが長いからわかるが、これは彼が本当に私のことを心配しているときの表情だ。
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