クールなCEOと社内政略結婚!?
 私は、彼を心配させないように、さらに明るく振るまった。

「そんなに心配しないで。思ったよりも悪くないっていうか、結構平気だから」

「平気って……それ結婚したばっかりの女性が使う言葉で、不幸ランキング結構上位だと思うぞ」

 言われてみればそうだ。普通だったら好きな人と結婚して、幸せいっぱいの時期だろう。それなのに今の私にぴったりな言葉はやっぱり『平気』だった。

「指輪は?」

「へ? あぁ……そういうの考えたこともなかった」

 私の言葉に、俊介は肩を落として首を振っている。どうしても今の私の状況が心配でたまらないらしい。

「だって、指輪もらったって困るもの。結婚のこと公にしてないし」

「それでいいのか? 誰にも祝ってもらえない、自分の仕事を続けるためだけに、そんな選択して本当によかったのか?」

 改めて聞かれると不安になる。

「たしかに、勢いで婚姻届けにサインしたのは認める。でも私にとって、恋愛や結婚よりもアナスタシアでデザイナーとしてやっていく方が大事だったの」

 以前の彼に言われてわかったことがある。私にっとってデザインが一番大事なんだってこと。そのために恋愛が妨げになるなら必要ない。だからこそ、今回も私はこの道を選んだのだ。
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