浮気男に絡めとられたら(続・恋愛格差)
人の意見聞こうよ

私、藤原透子は30歳になる前にようやく結婚出来ることになったようです。

そう、そのようです。

私がなぜこんな他人事のように話しているかというと、
それは……自分の事ではないように事が進んでいるからです。


「透子!これ~これに決めた!」
「……何が……?」
「これ!透子のドレス。ウェディングドレス!」
「……」

それは花嫁が決めることでしょう。

「で、新婚旅行はね、ありきたりだけどグアム!近いしね!」

それはせめて二人で決めることでしょう。

「それから……あとなんだっけ?あ、そうそう。式の招待客はうちの先輩……だけだな。あとは親族……少ないな。50人ぐらいの式で良いよね?透子の友達とか親戚、うちの方に座ってもらって良いからさ。」

ですからそれも私を交えて家族で話し合いを…………プチッ

「いい加減にしてっ!」

ブライダル雑誌を持ったまま、固まる優(すぐる)。
沈黙に満足した私はすうっと息を吸った。

「なに?なに勝手に決めちゃってんの?私のドレス?そんなフリフリ、この歳で着れるか!グアムぅ?グアムなんか学生の時から何度も行ってて新鮮味無いわ!近いとかいう理由はなんなのよ!近場で良いなら箱根のが近いわ!式の招待客は私たちだけで決めらんないでしょうがっ!!
一生に一回の結婚をなんだと思ってんの!やっつけ仕事じゃないっつーの!」

はぁはぁと肩で息をしている私を唖然と見ているイケメン。
そうこの男こそ、私にプロポーズした次に日に実家まで赴いて人たらしな性質を存分に使い、アラサーの癖に可愛いワンコのように私の親の心をガッチリ掴んで、最後には「息子に来てくれて嬉しい」と頑固親父に言わしめた……
ちょっと勘違い残念王子『吉岡優(よしおかすぐる)』である。

「……え?でもお義父さんが好きにしていいって……」
「それは『私たちの』って意味でしょ!優一人の好きにって訳じゃない!」
「そりゃそうだよ。どんな希望あった?」

沈黙…………
実は希望は、あんまり無い。
ただ優一人で決めちゃってるのが寂しかっただけ、なんて言えない。

「何でも言ってよ。だけど早くね。俺、早く決めちゃって早く結婚したいんだもん。」

「もん」って……アラサーだよ、キミ?
しかしシュンってなってる優はやっぱり、くそーカワイイじゃないか!垂れた耳と尻尾が見えるわ!

「グアムも嫌なら箱根で良いよ。」
「いや……別に箱根が良いって訳じゃ……」
両手をブンブン振る。いつでも行けるとこは極力避けたい!
「グアムはもう透子は行き慣れてるんでしょ?だったら買い物とか観光とかもそんなに行かなくていいし、ゆっくり出来るかな……と思っただけなんだ。」

若干照れている優は、その人差し指で鼻の頭を掻く仕草すらイケメン。
くっそー!キュンとするぜ~

「ドレスはさ……俺が着て欲しいなぁって思ったやつ。絶対透子に似合うと思って!……でも好みあるよね。ごめん。」

だめだ。勝てる気が全くしない。

胸はキュンキュンいいまくってるが、一応眉間にシワを寄せていると、
「これからはちゃんと相談して決めよう。
ただ俺、透子と早く結婚したいんだよ。一日も早く。」

こんなイケメンに望まれて結婚できるって、
私って果報者?



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