浮気男に絡めとられたら(続・恋愛格差)

優はそれから方々に挨拶に回り、(もともと仕事仲間だし)談笑していた。

時おり、当たり障りなくゆかりさんとも話していた。
だけど、私はもう胸が痛まなかった。

30分ほど他の人と話していた優はようやく私の横に落ち着いた。

「久しぶりですね。吉岡さん!」
明るいミキちゃんにイケメンスマイルを惜しげもなく撒き散らし、「ほんとだね~。ミキちゃんにもほんとお世話になったね。」なんて返していた。
「やっと解放されるよ、俺。」
三池さんが傾けたビールにグラスを差しだし、
「ほんと。三池さんにはお世話になりましたよね。それにしては後任についての重要な情報が来なかったんですけど。」と、三池さんを睨みながらビールのグラスを空けた。

「え?そこ重要?……あ、そうか!確かゆかりちゃんと知り合いだったな!」
「……ですね。」
「誰だって良いじゃん。たまたま飲みに行って、仕事探してるって言うからスカウトしたの。」
「飲みに?」
「うん。なっ!」
と、私に同意を求める三池さんはちっとも悪びれてはいない。

優がゆかりさんが元カレだって知らないからなぁ……。

「……透子。……まぁいいけど……」

呆れている優にビクビクしながら小さな声で告げた。

「ごめん。こんなにトントン拍子に行くとは思わなくて……。落ち着いたら言うつもりだったんだけど……。」

「もう……そんなんばっか」
ハァーっとあからさまにため息をついた。

「まぁ、いいや。取り合えず上手く纏まったんだな。」
「……そ、そう!そうなのよ!なんだかね~……」
もうやけくそだ。
アッハッハと笑ってごまかした。

優はそんな私を見て苦笑い。
「思いもつかない事するな、透子は。……だけど、透子らしいな。」

料理には手を付けず、ビールばかりを飲んでいる。

「透子には敵わないな」

その言葉で全てを許されたようだ。
私は優に感謝の意も込めて、にっこり笑った。




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