浮気男に絡めとられたら(続・恋愛格差)
私は要りませんか?

また来てしまった……

私が見上げるのはそう、今朝出てきたゆかりさんのアパート。

どうしても今日はここに来たかった。
誠ちゃんが一人で泣いてる気がして。

ドアベルを鳴らして「誠ちゃん。透子です。」と告げると
バタバタと音が聞こえてすぐに開けてくれた。

「透子ちゃん!」

誠ちゃんは全然泣いていなかったけれど、私の顔を見ると私に抱きついてきた。
私はぎゅっと抱きしめ返し、「来てよかった」と思った。

「また会えるなんて嬉しい!」

そんな無邪気な様子にきゅんとする。
私って母性本能くすぐられるのに弱いよなぁ……と思いながら涙ぐんだ。

「透子ちゃんはどうして来たの?」
「え?あ……と、なんか寂しくなっちゃって……アハハ」
男の子とはいえ「寂しがってるだろうから」なんて言っては彼のプライドを傷つけるかもしれない。
「そっかぁ」
なんて得意気に笑う誠ちゃんはまぁお子様なんだけど。

誠ちゃんと昨日作った惣菜を食べて、私たちは大盛り上がり。
ゆかりさんや優に連絡するのも忘れていた。

だから優からの着信があった時、驚愕した。

し、しまった……
今日は優から電話で昨日の事をちゃんと説明する予定だったんだ……
あーどうしよう……

スマホを握り締めて固まっている私に誠ちゃんは
「出ないの?」
と尋ねる。
だけど私はヘヘヘと笑うことしかできない。

「……もしかして、昨日のおじさん?」
さすがは誠ちゃん。ご名答……じゃないっつーの。

「出たくないの?」
未だに鳴り止まないスマホを見つめる。
「出たくない……訳じゃないけど……」

すると誠ちゃんは突然そのスマホを小さな手で奪い取り、着信拒否にしてしまった。

「せ、誠ちゃん?」
「出なきゃいいんだよ。あんなの。」

いや、そんな訳には!

そう思うけど、私を思ってしてくれた行動を頭ごなしに否定できず、ただ困った。
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