コクリバ 【完】
高木先輩が部屋に来ないことをホッとすると同時に、残念にも思った。
ちょっとだけ二人きりになりたかったな、なんて思ってしまう。

急いでタヌキメイクを落として、お気に入りのピンクのシュシュで髪をまとめて階下に急いだ。

キッチンではまだ高木先輩が菊池雅人に怒られている。
「分かったかって聞いてんだろ?」

それに対して高木先輩は軽く笑って面倒そうに何度も頷いている。
なんだか可愛らしい。

そのまま黙ってカレー作りの輪に加わると、菊池雅人が私に気付いてこっちを見た。

「そっちの方がさっきよりいいぞ。な、セイヤ」

呼ばれた高木先輩からの視線を感じる。

「あぁ。今の方が可愛いな」

可愛いって……高木先輩が、私に「可愛い」って

ボソリと吐かれたその言葉に、異様に反応してしまう。
キャーって叫び出したいくらいだったけど、必死に抑えた。

でも……
「奈々…おまえ、真っ赤だぞ」

菊池雅人のジャガイモの皮を剥く手が止まっている。
そんなこと気付いても普通言わなくない?
最初は漏れ出たって感じだったけど、容赦なくその先を続ける菊池雅人。

「おまえ、セイヤのこと好きなのか?」

包丁を持つ手が止まる。
耳まで熱い。

どうしよう。バレてしまう。
上手い言い訳が出てこない。
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