コクリバ 【完】
「菊池方式もいいな」
なんて言いながら私たちは一緒にお風呂に入った。
バスルームの中は薄暗く静かで、私が動くたびに水の音がついてくる
先輩は私の髪を触りながら、ゆっくりと話し出した。
「おまえ、ショートにしろよ。似合うんじゃね?」
「そうですか?男の人は、みんな長い髪が好きなんだと思ってました」
私もゆっくりとした口調で答えた。
甘い時間がもっと続くように……
「は?それは誰からの情報?」
「誰からって……一般論で……」
「関係ねぇって。俺が似合うと言ったら似合うんだよ」
後ろに座っている先輩の方は見れないけど、たぶん左頬を上げて笑っていると思った。
「……先輩、強いんですね。私はまだそんな風に何が良いとか、何が好きとかはっきり決められません」
自分に自信を持ってる人が羨ましい。
私にはそんな風に断言できるようなものなんて、何一つ無かったから。
どれが好きで、どれが素敵で、どれに心惹かれるのか、まだよく分からない。
「奈々。じゃ、俺のことは?」
「え?」
「俺のことも好きかどうか分からない?」
「……」
私は小さく首を横に振った。
「好きな物あるじゃん」
先輩がくすりと笑う。その振動が湯船に波紋を広げた。
「そのままでいろよ。おまえはずっとそのままで……」
「私も、強く、なりたいです」
先輩は何も言わずに私を抱きしめた。
温かくて、安心感があって、幸せで……少し強くなれそうな気がした。
更に強く抱きしめられて、先輩の唇が私の肩に触れると同時に、
「……悪かったな」
低い声がした。
まただ。謝られる覚えはないのに。
「……なんで……」
謝るんですか?―――その言葉が口から出てこない。
「おまえ、無理してるだろ」
なんて言いながら私たちは一緒にお風呂に入った。
バスルームの中は薄暗く静かで、私が動くたびに水の音がついてくる
先輩は私の髪を触りながら、ゆっくりと話し出した。
「おまえ、ショートにしろよ。似合うんじゃね?」
「そうですか?男の人は、みんな長い髪が好きなんだと思ってました」
私もゆっくりとした口調で答えた。
甘い時間がもっと続くように……
「は?それは誰からの情報?」
「誰からって……一般論で……」
「関係ねぇって。俺が似合うと言ったら似合うんだよ」
後ろに座っている先輩の方は見れないけど、たぶん左頬を上げて笑っていると思った。
「……先輩、強いんですね。私はまだそんな風に何が良いとか、何が好きとかはっきり決められません」
自分に自信を持ってる人が羨ましい。
私にはそんな風に断言できるようなものなんて、何一つ無かったから。
どれが好きで、どれが素敵で、どれに心惹かれるのか、まだよく分からない。
「奈々。じゃ、俺のことは?」
「え?」
「俺のことも好きかどうか分からない?」
「……」
私は小さく首を横に振った。
「好きな物あるじゃん」
先輩がくすりと笑う。その振動が湯船に波紋を広げた。
「そのままでいろよ。おまえはずっとそのままで……」
「私も、強く、なりたいです」
先輩は何も言わずに私を抱きしめた。
温かくて、安心感があって、幸せで……少し強くなれそうな気がした。
更に強く抱きしめられて、先輩の唇が私の肩に触れると同時に、
「……悪かったな」
低い声がした。
まただ。謝られる覚えはないのに。
「……なんで……」
謝るんですか?―――その言葉が口から出てこない。
「おまえ、無理してるだろ」