コクリバ 【完】
「あいつは学校にも来てねぇよ」

更に衝撃的な話は続いた。

「市原に会うのがイヤなんだろ。あいつの自慢話を聞きたくないんだろうなぁ。同じ教室ならイヤでも聞こえてくるしな。なぁ奈々、おまえはそうは思わないのか?」

「……」

胸がギシギシいってる。

「俺だったら許さねぇよ。市原も、ヤったおまえも、二人ともボコボコにしねぇと気が済まねぇ」

ガシャン と、金網が音を立てたのは、菊池雅人がそこを蹴ったから。

「…うくっ……」

堪えていた涙がこぼれた。

「泣いて済むと思うなよ!何しに来たんだよ!今更あいつに何を言うつもりだったんだよ!謝って済む話じゃねぇんだよ!」

ガシャン
もう一度金網が揺れる。

唇を噛んで涙を堪えようとするけれど、胸の痛みと肩の震えが止まらない。

高木先輩は誤解したままだ―――

甘かった。

今更ながら、自分の考えの甘さに目の前が暗くなった。
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