コクリバ 【完】
「どうした?」
「いえ。ごちそうさまです」
「あぁ……奈々。俺、今日泊まりだけど……」
「はい」
「……おまえも、一緒にどうだ?」

耳を引っ張ってる先輩に、静かに首を横に振って答えた。

「そうか……」

俯く先輩から目が離せない。

「先輩。送ってください」
「……あぁ」

うちへの道を、先輩と一緒に歩く。
この会えなかったひと月、どれだけもう一度こうしたいと思ったことか……

「……」
「……」

先輩も私も無言で歩いた。


自宅アパートへの最後の坂道を上りながら、先輩が私の手を掴んで立ち止まる。

「本当に帰るのか?」

小さく呟かれた声は、街の音に消されそうで、

「もう、玄関見えてますよ」

何か言われた訳じゃないけど、先輩の気持ちはなんとなく解った。

「……そうだな」

自分の気持ちにも気付いた。

「うち、2階です」
「知ってる」

「良かったら、寄っていきませんか?」
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