コクリバ 【完】
最後の方は日本酒まで飲み始めて、今日は泊まるつもりなんだろうなとぼんやり思った。

「このヒレ酒旨いな。おまえも飲むか?」

先輩が口を付けたコップをそのままもらって口を付けた。

一人で間接キスだとドキドキしたけど、そんな子供みたいなこと言っちゃいけないと思って黙っていた。

「美味しいですね」
「だろ?おまえの分も頼むか?」
「私はいいです。もうけっこう飲んだので、これ以上は……」
「じゃ、これ飲んでいいぞ」

そう言って先輩がヒレ酒を真ん中に置く。

一つのヒレ酒をそのまま二人で飲む。

間接キスを何度もしたような変な気分になっていると、先輩と目が合った。

一瞬の間のあと、お互い笑った。

同じことを考えていたのかもしれない……


店内が静かになり始めて、そろそろ帰る頃合いだと思うと先輩が立ち上がった。

「行くぞ」

また、先に会計に歩いて行く。

この人は私の都合は考えないのだろうか。

アタフタとバッグを持ちコートかけから二人分のコートを取り、出口に向かうと、先輩はもう財布をしまうところ。

この前と同じ女将さんに「ありがとうございました」と綺麗に微笑まれながら、外に出た。

私の腕の中から当り前のように自分のコートを取り、それを羽織る先輩を見ていた。
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