コクリバ 【完】
インターハイはもう目の前だった。

午後の相手は格下の高校らしかったけど、昨日強豪校に勝ったらしくて油断は禁物らしい。
私たちはインターハイ開催地に応援行くかどうかって話までしてた。

だけどスタメンに高木先輩がいない。
どうやら2年生主体のチームが出てるらしい。

OB軍団が憤慨して、
「何やってんだよ、あの監督!」
「高木を出せ!」
「練習試合じゃねぇんだよ!」
大声で叫んでいる。

それでも、立ち上がりは2年の先輩たちも奮闘していた。
でも、少しづつ少しづつ点差が開いていく。

何が悪いと言う訳ではない。
ただ相手に押されているという感じだった。

ようやく選手交代の場所に高木先輩たちが現れたけど、すぐには交代できないようで、
その間にも相手チームに点数が入り続ける。

第一ピリオド終了を待たずに交代したにも関わらず、その後の流れも相手チームが持っていた。

苦戦……先輩たちの表情が更に険しいものになっていく。

自ずとファウルも増え、相手チームにフリースローのチャンスを与えてしまう。
相手チームはそのチャンスは必ずものにしている。

私たちは、もう祈るしかなかった。

最後の第4ピリオドが始まり、その時点で、点差は10点も開いている。

応援席では泣いてる人もいた。

でも、高木先輩が一瞬だけ、ほんの微かに左頬で笑った。

誰も気が付かなかったかもしれないけど、私だけはその楽しそうな顔に気付いた。

先輩……

これまでの流れを変えるように、そこからはうちの高校が責めていた。

これまで高木先輩に集まっていたボールが、菊池雅人にパスされたり、
何より高木先輩のフェイントが決まりまくっている。

先輩、楽しそう。

全員がシュートを決めていた。
リバウンドもよく取れていた。
あっという間に点差はなくなり、一進一退の攻防戦にまで追い上げた。

胸が高鳴る。
あと1点でも多く……

怒涛のラストに、試合終了の笛が鳴る。

得点は……同点。

会場中がうるさいくらいの悲鳴の嵐。
たぶん私も叫んでた。

これから延長戦が始まるらしい。
これに勝てばインターハイ。

そしてそれは相手チームも同じ
< 76 / 571 >

この作品をシェア

pagetop