コクリバ 【完】
ドキドキしていた。
心臓の音が、会場の声援より大きかった。

どうか勝ちますように……

延長戦が始まる。

相手チームの気迫が増しているようだったけど、高木先輩たちも凄い集中力で素早い動き。

一進一退の点の取り合い
もう時間が残っていない
一秒でも早くボールを奪って

ゴール下での混戦になった時、ピッと笛が吹かれた。
うちのチームがディフェンスファウルをしたというのだ。

抗議する先輩たち。
大声で文句を言うOBたち。

だけど、抗議は認められず、相手チームのフリースローになった。

シンと静まりかえった体育館に、ゴールネットが揺れる音がする。

外せ!外せ!と心の中で念を送った。

だけど、フリースローは2本とも決まってしまう。

その後、試合は再開されたものの、点数を取るには短すぎた。

結局、この2点が決め手となって、
先輩たちは……


負けた。


床に片膝をついて高木先輩が泣いている。
菊池雅人は足を投げ出すようにして項垂れている。

もしも、最初から先輩たちが出ていたら、
もしも、あのファウルが取られてなかったら、
もしも……

私の眼からも涙が溢れだしていた。

最後に相手チームと握手を交わす先輩たち。
明暗は一目瞭然。
残酷だと思った。

相手チームが応援席に走っていって飛び跳ねている。
先輩たちも私たち応援席の前で深々と頭を下げた。

「よくやったぞー」

誰かがそう言った。

そして拍手が起こる
それは大きな拍手の音

お疲れ様
よくやったよ
素敵でした
ありがとう

そんな想いを乗せた拍手はしばらく止むことはなかった。


この試合を最後に、
高木先輩たち3年生はバスケを引退した。
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