コクリバ 【完】
試合開始の笛が鳴る。

菊池雅人がアタックに飛ぶと、高木先輩がブロックに飛んだ。
着地して何か言いながらニヤッと笑っている二人。

本格的にしている人たちからすれば、打ち方や、ブロックのフォームはガタガタなんだろうけど、
この人たちは、やっぱりジャンプ力がすごい。
だから滞空時間が長くて、飛んだ後に空中で止まっているみたいに見える。

そして美術部部長の市原先輩も、ジャンプが高い。
以前、バスケ部だったというのは嘘じゃない。
もともと背が高い上に、このジャンプ力、更にあの整った顔立ちで、
会場にいる女子のほとんどは市原先輩を見てるんじゃないかと思われた。

試合は、どちらも実力は互角で、すごく面白くなっていた。

「セイヤ!」

市原先輩が倒れながら、トスを上げる。
それを高木先輩がピッタリなタイミングでアタックする。

「キャー」という歓声の中、二人はハイタッチしていた。

男の友情、って感じ。
このシーンがスローモーションで流れたら、それだけで泣けると思う。

そんなことを考えてたら、4組に飛んできたサーブに誰も手を出さないで、落ちる寸前に高木先輩と市原先輩が同時にボールに向かって飛び込んでぶつかってしまった。

二人は…っていうか、体育館全体も笑っている。

先に起きた高木先輩が、市原先輩に手を出し、引き起こしていた。
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