コクリバ 【完】
「ねぇ、奈々。もう吉岡のことはなんとも思ってないの?」
絢香が聞いてくる。

「うん。もう大丈夫だよ」
「そっか。オサムッチがね。今度4人でどっか行かないかって…」
「え?絢香、オサムッチと付き合うことになったの?」
絢香が首を横に振る。

「まだ。まだ何も言われてないんだけど、でも、どっか行こうって……」

私は絢香の腕を嬉しさのあまり叩いた。

「行ってきなよ。良かったじゃん」
「うん……でも、4人って…」
「絶対二人がいいって。二人だったら行くけど、って言ってみたら?」
「そうかな~」

私たちの話はそれ以上続けられなかった。

他の1年1組の女子ソフトに出ていたみんなが集まって来たからで、みんなで男子バレーを応援しようということになった。

吉岡達もかなり良い戦い方をしていたけど、残念ながら準決勝で3年4組に敗れた。

高木先輩と市原先輩のいるチームに……

高木先輩たちは本当に楽しそうで、ミスしても笑っている。

それに対して、吉岡達はいっぱいいっぱいで、本気の顔で、真っ向勝負。
でもやっぱり3年生の方が上手で、
「高木ー」
と呼びながら、トスを上げたセッターが、本当は市原先輩に上げていたりとか……

フェイントも多かったし、チームワークも良かった
3年生はさすがずる賢い勝ち方だ。

決勝戦はそんな3年4組と、菊池雅人がいる3年8組。

他の終わった競技の人達も応援に来ていて、今はこの男子バレーに多くの注目が集まっている。
2階部分の通路は人でいっぱいだった。

選手がコートに入った途端、「キャー」という体育館の壁が震えるほどの歓声が沸き起こる。

何事かと思ったら、その歓声に市原先輩が右手を挙げて答えてる。

やっぱり市原先輩はモテるんだなぁ、とボーっと見ていると、一瞬、高木先輩と目が合った気がした。

「がんばれー」

大声援に紛れて叫んだけど、聞こえた様子はなかった。
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