不思議の国の物語。
第四章 思い出したくない思い出。
俺が麻折より幼かったころに両親は離婚した。 
なんていうか俺は麻折と少ししか血は繋がっていないらしい。  
それなのに対し俺は麻折と小さいころからの兄弟として育てられた。
「お兄ちゃん…,お兄ちゃん。」
と慕ってくれていた麻折。 
でも,俺は分かっていた。 本当は……──。 
血が繋がっていないことを─。
「麻折,うるせぇ。 お兄ちゃんなんて呼ぶんじゃねぇよ。」
「で,で,でも…─お,お兄ちゃんはお兄ちゃんでしょ??」
麻折は俺が苛めたのにも関わらずシクシク泣いていた。
「お,おい。 麻,麻折? な,泣くんじゃねぇよ。」
そして麻折は言ったんだよ。 
俺に最高の笑顔を見せて。
「泣いてなんていないよっ♪ あたしは強いんだぞ!」
エッヘンと王様みたいにして…──。 
泣き崩れた顔を隠そうとしている。 
そんなことしても無駄なのにな。 
「麻折,目から汗が出てるぞ。」
「う,ううん。 違うもん……。 あ,汗だもん!」
「あっれぇ~。 麻折,なんか矛盾してるぞ。 俺は,目から汗が出てるって言ったのに対してお前は逆に汗だもんって。ハハッ」
「うぅ~。 お,お兄ちゃんのバカァ!!」
「まぁな。 でも引っかかったお前も悪いぞ。」
いつも喧嘩して,楽しい兄弟のようだった。
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