ここで息をする


……映画って、色んな人の手が加わって一から作り上げるものなんだよね。ページ内の制作スタッフの名前を順に追いながら、しみじみとそのことを感じ取る。

監督と脚本が、高坂先輩。撮影と映像編集が、如月先輩。美術と演出関係が、佐原先輩と田中さん。

一人一人の力を合わせて、一つの渾身の作品が出来上がる。

大変な作業ではあるだろうけど、それでも作り上げたい世界がこの人達にはあるんだろうなと、台本を見ながら活気に満ちた表情になっている部員達を見て思った。

きっとそんな顔にさせているのは高坂先輩がかつて私に告げた熱い思いと一緒で、みんなこの映画作りがとても好きだというオーラを纏っている。

好きなものがあるってこんなにも一生懸命になれるんだな……と、私はどこか遠くから眩しい光景を眺めているような気分で思った。


その後も細々とした脚本内容や役の説明、そして最初の撮影日を確認して、打ち合わせは終わりを迎えた。

ただ部員達は何やらもう少し準備や話し合いをするから部室に残るらしい。私と航平くんだけが部屋を出て、昇降口までの共通の道を肩を並べて歩くことになった。


「そういえば航平くん、今日は部活休みなの?」

「ああ、休み。今からスクールの方では泳ぐ予定だけどな。だから今日は、波瑠と帰る方角が一緒だな」


私が以前通っていたスイミングスクールは、私の家の近所にある。隣町に住んでいる航平くんや沙夜ちゃんの自宅周辺にはスクールがなくて、私が住む町の方に通いに来ていたんだ。


「スクール、今でも続けてるんだね」

「うん。まあ部活もあるから、なかなか頻繁には行けてないけどな。今は個人指導って感じで、泳がせてもらってる」

「そっか」


私も中学のときは部活と何とか両立しながらスクールに通っていたことを思い出し、苦い懐かしさが胸に広がった。


< 72 / 151 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop