家族の絆
 9月11日の一周忌には世界各国で危機対策が講じられたり、いろんな催しものが執り行なわれたりしたが、特に大きな混乱は起こらなかった。ただ、アメリカのブッシュ大統領がイラクに対して強硬な姿勢で対処しようとしており、予断を許さない状況であることは変わっていなかった。

 12日は、デジタル放送研究会の案内を書いたり、出張の報告書をまとめていたりと、祐一は書き物ばかりしていた。夕食のときに連絡すればよかったのだが、そのときには報告書のことで頭がいっぱいだった。お店で働き始めるとユキには連絡が取れないのを知っていたが、気が付いたら九時になっていた。電話をしたが、やはり留守電になっていた。しかし、直ぐに折り返しがあった。
「ママが、祐一さんに来て欲しいって。それより、明日、用意しておきますから!」
 翌日の金曜日、それも9月13日の金曜日、朝10時に、ユキと新橋駅前で前回と同じように逢って封筒を受け取った。その足で、虎ノ門のハンビット銀行に行き、前回と同様にマネーグラムで送金した。その送金レシートと共にロバート宛に早急に送金を実行するようにファックスを送った。
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