家族の絆
 ワインバーの照明はそれほど明るくはなかったが、近くのテーブルにいた女性3人のグループがこちらを盗み見して、こそこそ話をしていた。祐一とユキはどのように写っていたのだろうか?
「それに、お義母さんたら・・・」
再び泣き出してしまった。親父さんが亡くなって、一旦はすべて女将さんの名義に書き換えたのをユキは覚えているというより、ユキも手伝って名義の書き換えを済ませていたのに、知らないうちに女将さんが一人で、徐々にユキの名義に書き換えていたようで、女将さんが亡くなった後、整理してみたら、大半がユキの名義になっていたということだ。
「お義母さんの葬儀を終えて、しばらくしてお店を開けたのだけど・・・」
一人じゃ寂しくてやっていけないと思い、売りに出してしまった。直ぐに買い手も決まってしまい、どうしようかと思っていたのだという。祐一が居酒屋〔寄り道〕を訪ねたときには、ほんの何日か後に明け渡すことになっていた。
「でも、自分の権利があるうちだけでもお店を開けておくことが、お義母さんへの供養になると思っていたの」
「その後のことは全く何も考えていなかったの。ひょっとしてあのままだったら、お義母さんの後を追っていたかもしれないの。本当に・・・」
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