冷たい男
「将李は勉強の方は順調か?」



「友人たちと、今年も楽しく学ばせて貰って居ます。卒業後、お父様のお役に少しでも立てるように、これからも頑張ります」



「あぁ、宜しく頼むよ。本当に、お前たちは私の自慢の子供だ」



母親より10以上も年上で、今年で67歳になる筈の父親は、深いシワを刻む顔で微笑む。

私と将李が嫌々ながら微笑み返し。

ただ、私の正面に座る統李に至っては、幸せそうだった。

上座に座る父親から、順に運ばれて来る前菜。

今日は母親が好きな、フランス料理。

私はどちらかと言えば和食派。

急にこんな予定が入らなければ、今頃は煮物でも作って食べて居たかった。



「「美味しいですね」」



隣の将李と被ってしまったが、母親をお膳立て。

普通とか言っても、両親の機嫌が悪くなるって事は目に見えてわかる。

いつか祖父母を加えての食事会では、祖母の“特に変わり映えしないわね”の一言で、両親は激怒してた。

表立って祖母に文句は言ってなかったが、その後からこちらから祖父母を誘う事はなくなった。

いつも、向こうからの誘いを受けるだけとなってしまった。




「お父様、お母様」



「どうしたの?統李」



「実は、将李にお見合いの話が来て居るのですが、お写真だけでもいかがですか?」



食事を我が家特有のスローペースで進めてると、突然の将李へのお見合い話が出た。

眉をピクピクとさせ、引き攣る笑みを浮かべながらお見合い写真を受け取った将李。
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