遺書
「でも、そのカマキリに家族がいたとして、彼がいなくなったことで彼の家族はきっと今頃悲しんでいるはずじゃ。友人もな。それはあんただって同じじゃ」
俺は何も言うことができず、ただ黙っておばあさんの話に耳を傾ける。
「たしかに、人間という生き物は忘れる生き物じゃ。時間が経てば忘れるかもしれん。でもな、家族や、本当に大切な人のことは忘れん。それが人間じゃ。それに、あんたが死ねば悲しむ人もおるじゃろ?」
「いませんよ。そんな人」
吐き捨てるように、俺は言う。
「本当にそうかね?じゃあ、あんたのお母さんや、ご家族はどうじゃ?」
「それは・・・」
俺は言い返すことができなかった。更におばあさんは続ける。
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