あ、あ、あ愛してる
「お願いします。伴奏をさせてあげてください」

仁科副部長は渋々、頷いた。

拓斗が和音くんの頭をポンポンと撫で、あたしの方を見た。

ツカツカと近づき、耳元で囁いた。

「和音はあんたを全国大会に出させてやりたくて頑張ってるんだ。県大会を突破して関東大会、必ず進出しろ。和音の無理をムダにするな」

涙が溢れた。

そこまで考えてくれていたことにも、和音くんの強い意志にも、涙が止まらない。

「泣くのは県大会を突破してからだ。和音のピアノ最大限に生かしてくれよ」

あたしは深く頷いた。

これから歌う自由曲の「ROSE」の歌詞が、鮮明に頭に浮かんだ。

和音くんのピアノ伴奏と「ROSE」を歌った和音くんの澄んだ歌声が、頭の中を大音量で流れていた。
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