あ、あ、あ愛してる
再会
「ありがとうございました」一言のメッセージにウサギのストラップが、添えられていた。

ステージから見えた着ぐるみのウサギ。

俺の頭の中、名前しか知らない花音の姿が焼きついていた。


「お前が持っていればいい」

拓斗と奏汰は俺に微笑み、俺はウサギのストラップをギターケースの中に大事に仕舞った。

バンドと学校と、ピアノとヴァイオリンのレッスン、リハビリで慌ただしく日々が過ぎる。

花音に会えないまま……。


「有栖川くん、153頁読んで」

有栖川和音(ありすがわかずね)、これが俺の本名。

俺は古典の授業に指名され、泣き出したい気持ちで渋々立ち上がった。

教科書を握りしめ、立ち竦む。


「有栖川くん、早く読んで」

こめかみに冷や汗が滲む。


「……つ――――つ、つきひは……ひ……ひ、ひゃ……」


「先生、有栖川は喋れません」


「時間が勿体なーい。他の人に読ませてください」

クスクスと笑い声が聞こえる。
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