真夜中のアリス

走り続ける。
汗が流れようが、それが冷えて身体の体温を奪おうが、息を切らして呼吸が上手く出来なくとも、何も気にならなかった。
あちらにいかなくとも、あの人に会える。やっぱりそう簡単にあの人があたしを置いて逝ったりなんかしない。そう、ある意味の期待と渇望に取り憑かれていたのだ。

「…!?いた…!!朱鳥くん…っっっ!!」

正面には、大好きなあの背中。そして、風にのって舞い踊る漆黒の髪。
けれど呼んでも、いくら叫んでも振り向いてもあたしを見ようともしてくれていない。

「朱鳥くんでしょ!ねぇ!!」

瞳は涙が浮かび、視界を歪ませる。

「瑠衣だよ…!あたしのこと…忘れたの!?」

聞こえていないのか、何も反応もなくその背中は前に進む、それ以上の動きは決して見せてはくれない。
その一瞬の隙をついてその背中はまた姿を消す。気がつくと、正面はがらんとした物淋しい光景。
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