真夜中のアリス

「何?」

「儂とした事が、ティーカップを部屋に持ち込むよう命じるのを忘れていてな、少しばかり足りなんだ。悪いが、部屋を出て左奥がカジノのキッチンじゃ。取りに行っては貰えんだろうか」

困った困ったと、掌を空にパタパタを仰ぎそれがない事を証明する。わかっているのか否か、芋虫はニヤニヤとした笑みを止める事なくじっとあたしを見つめている。

「えー…。しょうがないなぁ。ていうか、お客さんにそんな事させていいわけ?」

「何を言う。客であろうとなかろうと茶を嗜むものは皆平等なのじゃ」

嫌味ったらしい笑みを浮かべ、さっさと行けと言わんばかりに退室を促される。渋々立ち上がり扉に手をかけ、部屋の外へ出る。まるで別世界、賑やかな声と楽しげなトランペットの音楽そして金貨のジャラジャラとした音がカルテットのように奏でられている。その音たちとの間逆にあたしは足を進め、言いつけ通りの部屋へと向かう。
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