真夜中のアリス
それだけ告げると、男はぴたりは笑みをやめ、静かに凝視する。その視線はあたしに向けられたまま背かれることはない。
「な、何よ。何が言いたいのよ…」
「本当に忘れてしまったの、アリス。俺の…事を。」
確かめるようにゆっくりと吐き出す。…一瞬、赤い瞳が哀しげに伏せた気がした。
「忘れるって…?ちょっ…」
「あっ!もうこんな時間!」
言葉は言いかけた途端に、男の驚愕を含んだ声色に掻き消されてしまった。