真夜中のアリス

立ち上がり、胸の懐中時計を確かめ慌てる様な動作でダストシュートから飛び降りてあたしを横切る。

「な、何よ急に!吃驚するじゃないの!」

「ごめんね、アリス。ゆっくりと話していたかったのだけど、俺行かなくちゃだから」

後ろ振り向き淋しそうな笑顔を浮かべすっと背筋を伸ばしてまっすぐに立つ。更に胸の懐中時計の針の様子を伺いながら。

「は…!?行かなきゃってどこに?」

「早く行かないと、女王様の機嫌を損ねてしまうから。またね、僕のアリス」

答えになっていない答えを言って一瞬にして消えてしまった男。
雨が降り止まない真夜中の裏路地に取り残されたのはあたしひとり。

「意味…わかんないし!!何なのよ今の!!」

鳴り響くのは自分ひとりの声。
闇の中。…ひゅうとどこから風が吹き荒れる。それは案外すぐ近くらしい。
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