【続】興味があるなら恋をしよう

「…藍原の実家にはな、別の男が挨拶に来る事があるかも知れないと言いに行ったんだ」

課長が空いたグラスにピッチャーで注いでくれながら言う。慌ててグラスを持った。

「すみません、有難うございます」

課長のグラスは空いていなかった。
…え、あ、今の話はどういう事だ。

「ま、どんな事があっても俺の気持ちに変わりは無いけどとは言ってある」

別の男って。どういう事だ…誰だ。
まさか…俺の事か…?
随分前の、恋人の振りをしようかって言った、そんな話じゃないよな。
そんな話は今更必要も無い。課長は行ったんだから。
何故そんな事を言ったんだ。…あるかどうかも解らない事を。

「別の男と言っても、坂本の事だとは言っていない。人物を特定できるような事は何一つ話していない。
ただ、その男が藍原の事を好きで、藍原もその男が好きだと話した。…二人は、運命で繋がっているような、そんな者同士だってな」

「え…はあ?課長…、相手の親に何を言ってるんですか…」

ボケの返しじゃないよな。今そんな場合じゃない。驚いた。何故そんな事を言う必要があるんだ。親だって混乱するだろうに。

「事実を言ったまでだ」

…事実って。そんな事…言ったら、…挨拶に来た課長は何だって、なりませんかね。
この言葉は口から出なかった。むしろ、飲み込んだ。

「今、坂本の頭に過ぎった通りだ。
わざわざ挨拶に行った俺は何だろうなって、なる。親御さんだって、何故、藍原が俺と挨拶に来たんだって思う」

うんうん、と頷きそうになった。
そもそも、二人で挨拶を済ませているのだから、俺の話なんてする必要は無い。…何故だ。

「挨拶に行ったからと言って、藍原の気持ちが、完全なモノではないと伝えておきたかった」

そうする事で、…もし、俺達の話が駄目になったとしても、藍原は責められる事にはならないからだ。
勿論、そうはならない。そう信じている。
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