【続】興味があるなら恋をしよう

課長の言う通りには出来なかった。
このまま自分の部屋に帰ったところで、通過するドアの向こう側に藍原は居ない。待っても帰って来る事はなくなった。

課長の住まいを知ってしまった以上、寄り道するのは当然だ。
好きなように行動してくれって、お墨付きも貰っている。…だから、いいんだ。
とは言え、今夜は下から建物を眺めるだけだ。
直ぐ課長も戻って来るだろうから。

駅まで送って貰わなくてもそれは全然いいんだ。課長の言う通り、男だし。
並んで歩いて帰って来るのは、さすがにもう避けたかった。終わったら、終わったところで別れたかった。だから、バーで別れて正解だ。


こちらからは入口が並んでいる事しか解らない。
今頃、風呂かな。
何階なんだろう。

いつまでもこうして眺めていても…もうそろそろ、帰らなきゃな。
不審者が居たって通報されるかも知れないから。
連行でもされたら偉い事になる。

課長、もうぼちぼち帰って来る頃か…。

いざ帰るとなると何だか後ろ髪を引かれる。
このマンションのどこかに相原が居ると思うと立ち去りがたい。

与えられた、もの凄い僅かな時間を、警戒しながら秒単位で眺めているような気がする。…別にこそこそしなくていいんだけどな。
どうも、奪うとか言った手前、いいと言われても、非があるような感じになる。
正々堂々と宣言したんだからいいんだよな。
仕掛けたって。
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