【続】興味があるなら恋をしよう
「私、迎えにだって、寄り道して買い物だって、送って行く時だって一緒に行きたいんです。
黙り込んだのは、課長が結婚する、相手の娘さんだと誤解して落ち込んだ事を思い出して終っていたからで、りおちゃんの事、嫌だなんて思ってないです。嫌われて終ったら無理かも知れませんけど…。
休みを潰されるなんても、思ってないです。子供みたいに拗ねて、ごめんなさい」
…頭を撫でられた。
「…気は合うと思うよ?天真爛漫だから。
ごめん、俺の言い方も悪かったよな。会った事も無い里緒といきなり過ごすなんて悪いと思ってだな…。最低限の接触で済ませられるならって、そう思ったんだ。
紬、ちょっと来て」
「え、は、い」
ぶつかったと同時に抱きしめられていた身体を離すと、手を引いてリビングに戻った。
「涙が溜まって…こぼれそうだ。…意地を張って、泣くほど拗ねたのか?」
首を振った。これは自分の浅はかさにだ。ソファーに並んで座らせると、ぽろぽろとこぼれ落ちた涙のあとを拭われた。
「はい、いい顔して?撮るよ?」
「え、え?こんな顔…あ」
パシャ…。いきなり肩を抱かれ、顔を寄せた写真を撮られた。
そしてどこかに送信された。
「妹に送った。里緒に見せてくれって、このお姉さんが一緒に遊んでくれるからって。
顔を知っておくだけでも、最初に会った時、緊張しないで済むからな。
里緒の写真も動画もあるぞ?見てみるか?」
「あ、はい」
画面を弄りながらまた肩を抱き、課長が顔を寄せて来た。
あ、課長…。
「おぉ、メール来たぞ。あ、ハハ、里緒で〜すだって。
ほら、これが里緒だよ。葵は…あいつ、わざと見切れるように撮ったな。
ま、葵の顔は俺の女バージョンだと思えば想像つくだろ?
お姉さんの名前はって、里緒が知りたがってるって。
よし」
課長は、またメールした。
少しやり取りをした。
「これでOKだ。…一緒に迎えに行こう。頼むな、紬」
「はい」
はぁ、…良かった。
ごめんなって囁いて、抱きしめられた。あ。…なんだか…じわじわ幸せ…。
俺は葵にこうメールした。
【一緒に暮らしている。紬(つむぎ)っていう名前の子だ。
里緒には、俺とセットだから、ママって呼んでもいいかもって言っておけば】と。
【了解。紬ちゃんね。匠、…やっとだね】
やっと?何がやっとだよ…。
葵はあっさりした性格だけど、遠慮なく入り込んでくるところがあるからな。
【まあ、詳しい事が知りたければ、今度、別日にだ。さっきのママの件は紬には内緒だからな。じゃあな】
「さてと。…紬、風呂入るぞ」
「はい、どうぞ」
準備は出来ていた。
「どうぞじゃなく、一緒にだ」
「えー…。急にどうしたんですか?」
「急にじゃない。俺が入って紬が入ってって、効率が悪い。一緒に入れば、ずっと一緒だ。
ずっと一緒に居られるじゃないか」
あ…。なんて言うか…。効率って…事務的に言われても。確かにおっしゃる通りなんですけどね。それには恥ずかしさというモノが伴うんですよ?
そんな純粋な目で言われると、断れないじゃないですか…。
「先に入っててください。…直ぐ行きますから」
「ん、解った」
キャ。課長?
「そう言って来ないかも知れない。こうして一緒に行けば間違いない」
お姫様抱っこで運ばれて終った。少しでも時間差でって思っていたのに…読まれちゃったか。
……課長。どんどん積極的になってる…。