【続】興味があるなら恋をしよう
四六時中、一緒に居ては、心臓が持たないかも知れない。
浴槽に浸かりながら、背中に感じる逞しい胸板を想像して、勝手に胸を高鳴らせていた。

はあぁぁぁ。
心臓どころか、身体が熱くなってくるから、それも大変なのに。
…課長。今更ながら、直視すると恥ずかしくなるし。昔からずっと憧れていたとはいえ、やっぱり凄く素敵過ぎる。背中を向けているから、このまま聞いてみようかな…。

「…課長?今まで…社内でお付き合いした方とか、居なかったのですか?」

「ん?居ないよ。仕事ばかりしてた」

そうなんだ。あ。社内でって聞いたから、社外に居たとか。でも、仕事ばかりしてたって言ったから居なかったのかな。

「…社外にも居なかったよ。社会人になってからは、付き合うという事はしていない」

ムムム。思わず振り向いていた。恥ずかしいのも忘れ、顔を暫く見つめてしまった。
…一夜限りの事はあったという事?アバンチュールは頻繁に?適度に?あったって事?

「…紬、急に険しい顔をしてどうした。だから、いい大人になってからは、付き合った人はいないよ」

大人の付き合いはしたのですね?

「紬、…想像で、俺を遊び慣れてる男だとでも思ってるのか?何か別の方向に考えを巡らせているだろ」

…課長には悪いけど頷きそうになった。だって、放っておかれる訳が無いもの…。課長だって、男の人の、…その……。

「…それなりだ」

…やっぱり。それなりにも違った意味がある。それっきりと、程度がふさわしい、と。
話の流れ、取りようによる。

「紬はどうなんだ?って、俺は聞かない。知りたくないからだ。知りたくもない事をわざわざ聞きたくない。過ぎて終った事にヤキモチを妬きたくないからだ。……色々と想像したくない。
余計な情報は一切、要らない。…誰かが紬に触れたとか考えたくない。
それが…例えばキスだけだとしてもだ」

ドクドクした。
後ろから回されていた腕に力が入った。
肩に顎を乗せられた。

「俺は小さいからな…。紬が今どんな顔をしているのか見たくない。…好きだから。
出ようか」

そのまま抱き上げられて浴槽から出た。
課長は前を見ていた。
私の方に視線を落とす事はしなかった。

私きっかけの話だった…。課長が言うように、聞かなくていい事だったのに…。
少しだけ気持ちが浮ついてしまったから…調子に乗ったんだ…。本当に、私って奴は、どうしようもないな…。

背を向けられてしまうのではと思っていた。
だけど課長はベッドの中で私をしっかりと抱きしめていた。

…好きだから。
さっき、お風呂でそう言った。何もかも話した最後にそう言った。

何も…揺れない。揺れていたとしても、表に極力出さず不安にさせない。
課長は、何があっても変わらないでいてくれる…。
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