恋する5秒前~無愛想なキミと~


今日は新学期初日。


午前中で授業が終わり、私は香奈と一緒に学校を出て駅までの道のりを歩きながら話していた。


「まさか、あの桜井君がねぇ」


真央ちゃんの話を聞いた香奈は、桜井君の人気が急上昇していることに驚いていた。


「でも、桜井君てバスケ部のエースでしょ?前から女子の人気は割りと高かったよ」


だって隣のクラスの高森さんも桜井君を追いかけ回していたし、梁瀬樹里さんだって桜井君の彼女だってウワサが流れている。


去年のミスコン上位の人達と話題が上がるということは、桜井君も周りからの注目がそれだけ高いってことだよね?


ある意味、瀬戸君よりモテるのかも知れないな。


「まあ、桜井君がモテるのは私も分かってるけどさ、それより環」


「なに?」


「花火大会の後、あんた、どっちと帰ったの?」


「どっちって?」


「瀬戸ちゃんか桜井君のどっちかって聞いてんのっ」


「あぁ、あの日ね……」


別に隠すつもりはなかったけれど、香奈に報告するような出来事は特になかったから、今まで黙っていたんだ。


やっぱりあの日のことを香奈は気にしていたんだ。


花火大会が終わって一緒に帰ったのは桜井君だった。


瀬戸君を一人残して帰ることになって心苦しかったけれど、桜井君と一緒に帰ることになってちょっとだけ嬉しかった。

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