恋する5秒前~無愛想なキミと~

桜井君と私達、4人で帰るのはあの時以来だよ。


彼とぶつかって足を痛めた私を彼は家まで送ってくれたっけ。


あの日は未来と翔をそれぞれ迎えに行きながら、夜ご飯まで作ってあげたんだよね。


たった2、3ヶ月前の出来事なのに懐かしく感じてしまう。


それから色々あって今に至るわけだけれど。


私の前を楽しそうに未来と翔がキャッキャと騒ぎ、一緒に笑う桜井君。


無愛想な彼の意外な一面を見つけたときは私も嬉しかったっけ。


そんな事を考えながら桜井君達三人の後を付いて帰ってきたんだ。


家に着くまでの間、桜井君とはひと言もしゃべってはいない。


香奈が期待するような出来事は全く起こらなかったんだ。


ざっと香奈に説明すると


「へぇ、桜井君って硬派なんだね。まあ、翔達もいるしね。環は瀬戸ちゃんの彼女だし、手を出さないって瀬戸ちゃんに宣言したんだもの、それを忠実に守るんだから、さすが男の中の男って感じだわね」


「香奈、なに?男の中の男って」


「ええー?環、知らないのぉ?」


「うん、知らない」


「あのね、男の中の男ってのはね……」


香奈は私にどういう意味で使うのか熱く語りだした。

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