恋する5秒前~無愛想なキミと~

表彰式が行われ、私達のクラスは男子のバスケットの部で優勝した。


桜井君が代表で表彰状を受け取った。


ガッツポーズを作って喜びを表現をする桜井君。あんな風に感情を表す彼を初めて見たよ。


優勝できてよっぽど嬉しかったんだろうな。いつもの無愛想な顔はどこにもなかった。


私の知らない桜井君の顔。


ひとつずつ見つける度に私の心の中に刻まれていく。


「ねぇ、ねぇ。うちのクラスの男子の中で誰が良いと思う?」


以前、香奈に聞かれて頭の中に浮かんできたのは桜井君だった。


いつの間にか気になっていたんだと思う。


いつも教室の片隅で、何が面白くないのか、ムスッとした表情で窓の外を眺めていた桜井君。


誰かが話し掛けても表情ひとつ変えずに受け答えする、冷たい態度。


同じクラスになってから彼の笑顔を見ることは1度もなかった。


そんなに学校生活が面白くないのなら、辞めちゃえばいいのに……彼に対して偏見の目を持っていた私。

< 229 / 297 >

この作品をシェア

pagetop